5月の爽やかな風が吹き抜ける季節になると、どこからともなく「夏も近づく八十八夜」というフレーズが聞こえてきますね。
日本の初夏の風物詩とも言えるこの歌ですが、歌詞の意味を詳しく知りたい、あるいは子供や高齢者の方と一緒に歌って楽しみたいと考えている方も多いのではないでしょうか。
実はこの短い歌詞の中には、昔ながらの日本の美しい風景や、お茶に込めた人々の深い想いがたくさん詰まっているのです。
この記事では、誰もが一度は耳にしたことがある唱歌「茶摘み」について、歌詞の全文から難しい言葉の意味、そして八十八夜という特別な日が持つ背景までを丁寧に解説していきます。
また、保育園や介護施設ですぐに使える手遊びの方法や、新茶がおいしい理由についても触れていますので、季節の行事やレクリエーションの参考にしていただけるはずです。
日本の伝統文化に触れながら、心豊かな時間を過ごすためのヒントを一緒に見つけていきましょう。
この記事でわかること:
- 「茶摘み」の1番・2番の正確な歌詞と、難しい言葉の意味
- 八十八夜の日付の決まり方と、なぜその日にお茶を摘むのかという理由
- 子供や高齢者と楽しめる「茶摘み」の手遊び歌のやり方
- 新茶をおいしく味わうためのポイントや文化的な背景
「八十八夜」の「茶摘み」の「歌詞」と意味を深く知ろう
- 文部省唱歌「茶摘み」の基本情報と歴史
- 1番の歌詞と「あかねだすき」「菅の笠」の意味
- 2番の歌詞と歌に込められた想い
- そもそも「八十八夜」とはいつのこと?計算方法を解説
- 「茶摘み」の手遊び歌のやり方と楽しみ方
- なぜ八十八夜にお茶を摘むの?新茶と縁起物の関係
文部省唱歌「茶摘み」の基本情報と歴史

「夏も近づく八十八夜」で始まるこの歌は、1912年(明治45年)に『尋常小学唱歌(三)』で発表されました。
作詞者・作曲者ともに不詳とされていますが、長きにわたり日本の音楽教科書に掲載され、世代を超えて歌い継がれている名曲です。

作者は不明ですが、京都の宇治田原町付近の茶畑の風景がモデルになったという説が有力です。のどかな風景が目に浮かびますね。
この曲は2拍子の軽快なリズムで作られており、茶摘みの作業をする際のリズムに合わせて歌われた労働歌としての側面も持っていると考えられます。
単純なメロディーだからこそ、誰でも口ずさみやすく、記憶に残りやすいのが特徴です。
歴史を知ることで、単なる歌としてだけでなく、当時の人々の暮らしや労働の様子を想像するきっかけにもなります。ぜひ、歌う前に少しだけ歴史について話をしてみるのも良いでしょう。
1番の歌詞と「あかねだすき」「菅の笠」の意味
まずは、最もよく知られている1番の歌詞を見ていきましょう。歌詞の中には現代ではあまり使われない言葉が含まれていますので、その意味もしっかりと押さえておくことが大切です。
| 歌詞 | 読み方 |
|---|---|
| 夏も近づく八十八夜 | なつもちかづく はちじゅうはちや |
| 野にも山にも若葉が茂る | のにもやまにも わかばがしげる |
| あれに見えるは茶摘じゃないか | あれにみえるは ちゃつみじゃないか |
| あかねだすきに菅の笠 | あかねだすきに すげのかさ |
ここで特に質問が多いのが、「あかねだすき」と「菅の笠」という言葉です。これらは当時の茶摘み娘たちの象徴的な衣装を表しています。
- あかねだすき(茜襷): 植物の「茜(あかね)」の根で染めた、少し暗めの赤色のたすきのことです。着物の袖が邪魔にならないように結びます。赤色は魔除けの意味もあったと言われています。
- 菅の笠(すげのかさ): 「スゲ」という植物を編んで作った笠(帽子)です。日差しや雨を防ぐために被ります。

赤いタスキに編み笠姿の女性たちが、緑の茶畑に点在している様子は、とても美しいコントラストを生み出しますよね。
この視覚的なイメージを共有することで、歌の世界観がより鮮明になります。イラストや写真を見せながら説明すると、子供たちもイメージしやすいでしょう。
2番の歌詞と歌に込められた想い

1番は歌えても、2番の歌詞はあやふやだという方も多いのではないでしょうか。2番には、茶摘みをする人々の心情や、お茶作りへの誇りが表現されています。
| 歌詞 | 読み方 |
|---|---|
| 日よりつづきの今日此の頃を | ひよりつづきの きょうこのごろを |
| 心のどかに摘みつつ歌う | こころのどかに つみつつうたう |
| 摘めよ摘めよ摘まねばならぬ | つめよつめよ つまねばならぬ |
| 摘まにゃ日本の茶にならぬ | つまにゃにほんの ちゃにならぬ |
「日より(日和)」とは、天気が良いことを指します。「日よりつづき」とは、晴天が続いている絶好の茶摘み日和という意味です。
雨が降ると茶摘みはできないため、晴れが続くことは農家にとって何よりの喜びでした。
後半の「摘まにゃ日本の茶にならぬ」というフレーズには、「自分たちが摘まなければ、美味しい日本のお茶はできない」という生産者の強い責任感と誇りが込められています。単なる作業ではなく、日本の文化を支えているという気概を感じ取ることができます。
そもそも「八十八夜」とはいつのこと?計算方法を解説
「八十八夜」という言葉は知っていても、具体的にいつを指すのか、毎年日付が変わるのか疑問に思う方もいるでしょう。
八十八夜は「雑節(ざっせつ)」の一つで、季節の移り変わりを把握するための目安となる日です。定義としては、立春(2月4日頃)を1日目として数えて、88日目の日を指します。
| 年 | 立春 | 八十八夜 |
|---|---|---|
| 2024年 | 2月4日 | 5月1日 |
| 2025年 | 2月3日 | 5月1日 |
| 平年 | 2月4日 | 5月2日 |
| うるう年 | 2月4日 | 5月1日 |
現在では概ね5月1日か5月2日になります。「八十八」という漢字を組み合わせると「米」という字になることから、農業にとって大変重要な日とされてきました。
この時期になると遅霜(おそじも)の心配がなくなり、気候が安定するため、農作業を本格的に開始する合図とされていたのです。
「茶摘み」の手遊び歌のやり方と楽しみ方

「茶摘み」は歌うだけでなく、2人一組で行う手遊び歌(手合わせ)としても非常に有名です。「せっせっせーのよいよいよい」の掛け声から始まり、リズムに合わせて相手と手を合わせます。
手遊びの基本手順:
- 向かい合う: 2人で向かい合って座り(または立ち)ます。
- 膝(または自分の手拍子): 「なつ」で自分の膝(または手)をポンと打ちます。
- 相手と右手: 「も」で相手と右手を合わせます。
- 膝(または自分の手拍子): 「ち」で自分の膝を打ちます。
- 相手と左手: 「か」で相手と左手を合わせます。
- 膝・両手: これを繰り返し、歌詞の最後「トントン」のリズムで両手を合わせたりします。
地域や教え方によってバリエーションは様々ですが、基本的には「自分の膝→相手の手」を交互に繰り返すリズム遊びです。
高齢者のレクリエーションとしては、脳の活性化やリズム感を養う運動としても活用されています。
なぜ八十八夜にお茶を摘むの?新茶と縁起物の関係
八十八夜に摘まれたお茶は「新茶」や「一番茶」と呼ばれ、特別視されています。これには味の良さと縁起の良さ、二つの理由があります。
まず味についてですが、冬の間に蓄えられた養分が若葉に凝縮されているため、旨味成分(テアニンなど)が豊富で、渋みが少ないのが特徴です。まさに一年で最も美味しいお茶と言えます。
次に縁起についてです。「八十八」という数字は「末広がり」で縁起が良いとされています。
また、昔から「八十八夜に摘んだお茶を飲むと、一年間無病息災で過ごせる」という言い伝えがあります。さらに、不老長寿の仙薬とも考えられていた歴史があり、健康を願う贈り物としても喜ばれます。

季節の初物(はつもの)を食べることは、寿命を延ばすとも言われています。新茶はまさにその代表格ですね。
「八十八夜」に歌う「茶摘み」の「歌詞」から学ぶ日本の季節と風習
- 保育園や介護施設で使える「茶摘み」レクリエーションのコツ
- 歌詞に出てくる「日和」とはどんな天気を指すのか
- 現代でも見られる?茶摘み衣装の体験スポットとイベント
- おいしい新茶の入れ方と味わうためのポイント
- 八十八夜以外の雑節と季節の移ろいについて
- 「茶摘み」の歌詞を子供に教えるときの伝え方
- 八十八夜の茶摘みの歌詞についてのまとめ
保育園や介護施設で使える「茶摘み」レクリエーションのコツ

「茶摘み」の歌は、保育園や介護施設のレクリエーションに非常に適しています。ただ歌うだけでなく、少し工夫を凝らすことで、参加者全員が楽しめる活動になります。
介護施設での活用例:
高齢者の方にとって、この歌は懐かしい記憶を呼び覚ます「回想法」につながります。「昔、お茶摘みをしたことがありますか?」「どんな衣装でしたか?」と問いかけながら進めることで、会話が弾みます。また、座ったままでできる体操として、手遊びの動作を大きくゆっくり行うことで、肩周りの運動にもなります。
保育園での活用例:
子供たちには、歌詞の意味よりも「音の響き」や「リズム」を楽しませることがポイントです。画用紙で作った「お茶の葉」を部屋に隠して、宝探しのように「茶摘みごっこ」をするのもおすすめです。見つけた葉っぱを集めて、おままごとの急須に入れるフリをするなど、ごっこ遊びへと展開できます。
歌詞に出てくる「日和」とはどんな天気を指すのか
歌詞の2番にある「日よりつづき」の「日和(ひより)」という言葉。現代では「行楽日和」や「洗濯日和」といった使い方が一般的ですが、本来は空模様や天気そのものを指す言葉です。
特にこの歌で使われている文脈では、穏やかに晴れた、何をするにも気持ちの良い天気を意味しています。
茶摘みは雨の日には行えません。濡れた茶葉を摘むと、加工する際に品質が落ちてしまうからです。そのため、晴天が続くことは、良質なお茶を作るための絶対条件でした。

空を見上げて「今日はいい日和だね」なんて言葉を使ってみると、少し風流な気分になれますよ。
現代でも見られる?茶摘み衣装の体験スポットとイベント

歌詞にある「あかねだすきに菅の笠」。この伝統的な衣装を実際に着てみたい、見てみたいという方もいるでしょう。実は、日本各地のお茶の産地では、新茶のシーズンに合わせて「茶摘み体験」を行っている場所が多くあります。
主な体験可能エリア:
- 静岡県: 牧之原台地や掛川市など、日本一の茶どころには多数の体験施設があります。
- 京都府: 宇治茶で有名な宇治田原町や和束町でも、風情ある茶畑で体験が可能です。
- 埼玉県: 狭山茶の産地でも、都心からアクセスしやすい場所でイベントが行われています。
これらの施設では、実際に茜色のたすきを掛け、笠を被って写真撮影ができるプランが用意されていることが多いです。ゴールデンウィークの旅行先として計画してみるのもおすすめです。
おいしい新茶の入れ方と味わうためのポイント
八十八夜に摘まれた新茶を手に入れたら、ぜひ一番美味しい方法で味わいたいものです。新茶は茶葉が柔らかく繊細なので、熱湯ではなく、少し湯冷まししたお湯を使うのがコツです。
新茶の美味しい入れ方:
- お湯を冷ます: 沸騰したお湯を湯呑みに一度注ぎ、70℃~80℃くらいまで冷まします。
- 茶葉を入れる: 急須に少し多めの茶葉(一人分約3g~5g)を入れます。
- じっくり蒸らす: 冷ましたお湯を急須に注ぎ、蓋をして約40秒~1分待ちます。茶葉が開くのを待ちましょう。
- 最後の一滴まで: 湯呑みに注ぐ際は、廻し注ぎ(少しずつ均等に注ぐこと)をし、最後の一滴(ゴールデンドロップ)まで注ぎ切ります。ここに旨味が凝縮されています。
新茶特有の若々しい香り(青葉の香り)を楽しむため、香りを逃さないように丁寧に淹れることが大切です。
八十八夜以外の雑節と季節の移ろいについて

八十八夜は「雑節(ざっせつ)」の一つですが、他にも日本には季節を表す美しい雑節がたくさんあります。これらを知ることで、日本の四季をより深く感じることができます。
- 節分(せつぶん): 2月3日頃。立春の前日。豆まきをして邪気を払います。
- 彼岸(ひがん): 春分・秋分の前後。先祖を供養する期間です。
- 二百十日(にひゃくとおか): 立春から210日目(9月1日頃)。台風が来やすい時期として農家が警戒する日です。
八十八夜と同様に、これらの日も農業や生活の知恵と深く結びついています。カレンダーでこれらの言葉を見かけたら、その季節ならではの風習や食べ物を思い出してみてください。
「茶摘み」の歌詞を子供に教えるときの伝え方
子供たちにこの歌を教える際、ただ歌詞をなぞるだけでなく、情景が浮かぶように伝えてあげると、より興味を持ってくれます。
例えば、「昔の人は、みんなで協力してお茶の葉っぱを一枚一枚手で摘んでいたんだよ」「このお茶を飲むと、元気になれる魔法がかかっていると言われていたんだよ」といったように、物語風に話してあげるのが効果的です。
また、「あかねだすき」を「赤いリボンみたいなもの」、「菅の笠」を「わらで作った帽子」と、現代の子供にもわかる言葉に言い換えて説明してあげるのも良いでしょう。
親子で一緒にお茶を飲みながら、「このお茶も、誰かが一生懸命摘んでくれたんだね」と話をすることで、食育や感謝の心を育む機会にもなります。
八十八夜の茶摘みの歌詞についてのまとめ

さいごに、記事の内容をまとめます。
- 「茶摘み」は1912年に発表された文部省唱歌である
- 作詞・作曲者は不詳だが、京都の宇治田原がモデルという説がある
- 1番の歌詞は茶摘みの風景や衣装を描写している
- 「あかねだすき」は赤いタスキ、「菅の笠」はスゲで編んだ帽子を指す
- 2番の歌詞は晴天の喜びと生産者の誇りを歌っている
- 八十八夜は立春から数えて88日目のことで、5月2日頃にあたる
- この時期は霜がなくなり、農作業や茶摘みの適期とされる
- 手遊び歌は2人一組で行い、リズム感や脳の活性化に役立つ
- 八十八夜に摘んだ新茶は栄養豊富で、無病息災の縁起物である
- 「日和」とは天気が良いことを指し、茶摘みに最適な条件である
- 現代でも静岡や京都などで茶摘み衣装の体験ができる
- 新茶は少し湯冷まししたお湯で淹れると旨味が引き立つ
- 子供に教える際は、物語風に情景を伝えると興味を持ちやすい
- 日本の四季や風習を感じながら歌うことで、より深い理解につながる

