ゴールデンウィークの時期が近づくと、カレンダーで見かける「八十八夜」という言葉。唱歌『茶摘み』でおなじみの日ですが、この日に特定の食材を口にすると縁起が良いとされる風習をご存じでしょうか。
実は、八十八夜の食べ物は新茶だけではありません。「八十八」という漢字に由来するお米や、春の体調を整えるための旬の食材など、昔ながらの知恵が詰まった行事食がたくさん存在します。
お茶以外に何を食べるべきなのか、それぞれの食材にはどのような意味やご利益が込められているのか、気になっている方も多いはずです。
また、せっかくの機会ですから、ご家庭で楽しめる美味しいレシピや献立も知っておきたいですよね。この記事では、八十八夜にまつわる縁起の良い食べ物とその由来を詳しく解説します。
この記事でわかること:
- 八十八夜に食べるべき縁起の良い食材とその意味
- 新茶やお米、草餅などが推奨される理由とご利益
- お茶以外にもある旬の鰹やたけのこの楽しみ方
- 新茶の茶殻まで美味しく活用するおすすめレシピ
八十八夜の食べ物にはどんな意味やご利益があるのか
- 八十八夜とは?日程と由来
- 無病息災を願う新茶(一番茶)のご利益
- 「米」の字にちなんだお米料理で豊作祈願
- 邪気を払う草餅やよもぎ餅の風習
- お茶以外にもある?旬の初鰹やたけのこ
- 藤の花に見立てた地域特有の和菓子
八十八夜とは?日程と由来

「八十八夜」と聞くと、なんとなく5月の初め頃というイメージをお持ちの方も多いでしょう。正確には、立春(2月4日頃)から数えて88日目にあたる日を指します。
この時期は春から夏へと季節が移り変わる大切な節目であり、農業に従事する人々にとっては特別な意味を持つ日でした。まずは、直近の日程を確認しておきましょう。
この時期は「霜が降りなくなる」目安とされており、農家にとっては種まきや茶摘みなどの農作業を本格化させる合図となります。
古くから「八十八夜の別れ霜」という言葉があり、この日を境に霜の心配がなくなり気候が安定すると言われてきました。

「八十八」という数字を組み合わせると「米」という字になりますよね。そのため、八十八夜は稲作農家にとっても大変縁起の良い日とされているんですよ。
また、末広がりの「八」が重なることからも、将来の繁栄や豊作を願う吉日として親しまれてきました。
現代では農業に携わっていない方でも、季節の変わり目に体調を崩さないよう、旬のものを食べて英気を養う日として定着しています。
無病息災を願う新茶(一番茶)のご利益
八十八夜の代名詞とも言えるのが「新茶」です。この時期に摘み取られたお茶は「一番茶」とも呼ばれ、一年の中で最も品質が高く、美味しいとされています。
冬の間にじっくりと蓄えられた養分が、春の芽吹きとともに若葉に凝縮されるためです。古くから「八十八夜に摘まれたお茶を飲むと、一年間無病息災で過ごせる」と言い伝えられてきました。
また、「長生きができる」とも言われ、贈り物としても大変喜ばれます。これは単なる迷信ではなく、新茶に含まれる豊富な栄養素が関係していると考えられています。
新茶には、旨味成分である「テアニン」が、二番茶や三番茶に比べて多く含まれているというデータがあります。また、抗酸化作用が期待されるカテキンや、ビタミンCなども豊富に含まれているとされています。
美味しい新茶を淹れる際のポイントは、少し低めの湯温(70度〜80度くらい)でじっくりと抽出することです。熱湯をそのまま注ぐと渋み成分が出すぎてしまうため、一度湯冷ましをしてから急須に注ぐことで、新茶ならではの甘みと香りを最大限に引き出すことができます。
「米」の字にちなんだお米料理で豊作祈願

お茶のイメージが強い八十八夜ですが、実は「お米」の記念日でもあります。先述の通り、「八十八」を組み合わせると「米」という漢字になることから、この日は五穀豊穣を祈願したり、お米農家の方への感謝を表したりする日でもあります。
そのため、八十八夜には白いご飯やおにぎりなど、お米を主役にした料理を食べる習慣があります。特に決まった形式はありませんが、この時期に旬を迎える食材を炊き込んだ「混ぜご飯」や「炊き込みご飯」が人気です。

お米の一粒一粒には88人の神様が宿っている、なんて言われることもありますよね。大切にいただきたいものです。
また、かつては農作業の合間に手軽に食べられるよう、おにぎりにして田畑に持っていくことも多かったようです。現代の家庭で楽しむなら、以下のようなアレンジもおすすめです。
| 料理名 | 特徴 |
|---|---|
| 茶飯(ちゃめし) | 煎じたお茶や茶葉をご飯に混ぜて炊いたもの。香ばしい香りが食欲をそそります。 |
| 豆ご飯 | 春に旬を迎えるえんどう豆などを使った、彩り鮮やかなご飯です。 |
| お赤飯 | 縁起の良い日であることから、お祝いの意味を込めてお赤飯を炊く地域もあります。 |
邪気を払う草餅やよもぎ餅の風習
八十八夜の時期には、古くから「草餅」や「よもぎ餅」を食べる風習もあります。これには、春に芽吹く生命力あふれる野草の力を体に取り入れようとする、昔の人々の知恵が関係しています。
特によもぎは、その独特の強い香りから「邪気を払う力がある」と信じられてきました。季節の変わり目は体調を崩しやすい時期でもあるため、薬草としても用いられるよもぎを食べることで、病魔を遠ざけようとしたのです。
また、お餅には「粘り強く」農作業に励めるように、という願いも込められています。これから始まる田植えなどの重労働に備え、腹持ちの良いお餅を食べてエネルギーを蓄えるという意味合いもあったのでしょう。
現在では、和菓子屋さんやスーパーでも、この時期になると鮮やかな緑色の草餅が並びます。あんこが入った甘い草餅は、新茶との相性も抜群です。
お茶以外にもある?旬の初鰹やたけのこ

「八十八夜 食べ物」と検索されている方の中には、お茶やお菓子だけでなく、夕食の献立になるような食材を探している方もいるでしょう。実は、この時期に旬を迎える海や山の幸も、縁起の良い食べ物として親しまれています。
代表的なのが初鰹(はつがつお)です。江戸時代には「女房を質に入れても食え」と言われるほど、初鰹は江戸っ子たちに愛された食材でした。
初夏に黒潮に乗って北上してくる初鰹は、脂が少なくさっぱりとした味わいが特徴です。八十八夜の時期にちょうど出回り始めるため、勝負運や運気上昇を願って食べられてきました。
春の味覚の王様「たけのこ」
山の幸としては、やはり「たけのこ」が挙げられます。たけのこは成長が非常に早く、天に向かって真っ直ぐに伸びることから、「子供の健やかな成長」や「立身出世」を願う縁起物とされています。
この時期のたけのこは柔らかく、えぐみも比較的少ないため、煮物や焼き物、天ぷらなど様々な料理で楽しむことができます。旬のエネルギーをたっぷりと含んだたけのこを食べることは、春から夏への季節の変わり目を元気に乗り切るためのパワーチャージにもなります。
藤の花に見立てた地域特有の和菓子
地域によっては、八十八夜の時期に見頃を迎える「藤の花」にちなんだ食べ物を楽しむ文化もあります。藤の花は、古くから高貴な花として愛でられてきました。
例えば、埼玉県春日部市や加須市など一部の地域では、「藤うどん」のように藤色をした麺類や、藤の花を模した和菓子などが販売されることがあります。
また、和菓子店では、季節の上生菓子として藤の花を表現した美しい練り切りなどが並ぶのもこの季節です。直接的な言い伝えがあるわけではありませんが、その時期に最も美しく咲く花を愛でながら、それにちなんだお菓子をいただくというのは、日本らしい風流な楽しみ方と言えるでしょう。
八十八夜の食べ物を美味しく味わうレシピや献立
- 旬のたけのこを使った炊き込みご飯の作り方
- 新茶を丸ごと味わう茶殻の天ぷらと佃煮
- 初鰹を美味しく食べるためのポイント
- 山菜の苦味で春のデトックスを取り入れる
- 家族で楽しむ八十八夜の行事食アイデア
- 八十八夜の食べ物に関するまとめ
旬のたけのこを使った炊き込みご飯の作り方

八十八夜の食卓にぴったりなのが、旬のたけのこをたっぷり使った「たけのこご飯」です。お米の記念日でもあるこの日に、春の香りを存分に楽しみましょう。
【材料(4人分)】
- お米:2合
- ゆでたけのこ:150g〜200g
- 油揚げ:1枚
- だし汁:適量(炊飯器の目盛りに合わせる)
- 醤油:大さじ2
- 酒:大さじ2
- みりん:大さじ1
- 塩:少々
- 木の芽(あれば):適量
【作り方】
- お米は洗ってザルにあげ、30分ほど置いておきます。
- たけのこは食べやすい大きさの薄切りやいちょう切りにします。穂先は縦に切ると見た目がきれいです。油揚げは短冊切りにします。
- 炊飯器にお米を入れ、調味料(醤油、酒、みりん、塩)を加えます。その後、2合の目盛りまでだし汁を注ぎ、軽く混ぜます。
- たけのこと油揚げをお米の上に広げるように乗せ、通常通り炊飯します。
- 炊き上がったら底からさっくりと混ぜ合わせ、お茶碗に盛り付けます。仕上げに手のひらで叩いて香りを出した木の芽を添えれば完成です。
新茶を丸ごと味わう茶殻の天ぷらと佃煮
新茶を飲んだ後、急須に残った茶殻をそのまま捨ててしまっていませんか?実は、新茶の茶葉は柔らかく、栄養もたっぷりと残っています。「食べるお茶」として料理に活用するのがおすすめです。
新茶の茶殻の天ぷら
水気を切った茶殻に、市販の天ぷら粉をまぶしてサッと揚げるだけの簡単レシピです。新茶の苦味と香ばしさが口の中に広がり、まるでお店で食べるような大人の味わいになります。塩を少し振っていただくと、お酒のおつまみにも最適です。
新茶の佃煮
ご飯のお供にするなら、佃煮がおすすめです。
- 茶殻の水気をしっかりと絞ります。
- フライパンにごま油を熱し、茶殻を炒めます。
- 醤油、みりん、酒、砂糖をお好みの濃さで加え、汁気がなくなるまで煮詰めます。
- 仕上げにいりごまや鰹節を混ぜれば完成です。
茶葉に含まれる不溶性の成分(食物繊維やビタミンEなど)は、お湯に溶け出しにくいため、茶葉ごと食べることでこれらの栄養素を無駄なく摂取できるというメリットがあります。
初鰹を美味しく食べるためのポイント

八十八夜のメインディッシュには、旬の「初鰹」がおすすめです。戻り鰹に比べて脂がさっぱりしているため、厚切りのお刺身やたたきにして、薬味をたっぷりと添えて食べるのが美味しい食べ方です。
【おすすめの薬味】
| 薬味 | 相性と効果 |
|---|---|
| 新玉ねぎ | この時期ならではの甘みのある新玉ねぎをスライスして合わせると、血液サラサラ効果も期待できます。 |
| にんにく | カツオ特有の鉄分のような香りを中和し、食欲をそそるパンチを効かせます。 |
| 生姜・ミョウガ | 爽やかな香りが初鰹のさっぱりとした味わいを引き立て、殺菌作用も期待できます。 |
「たたき」にする場合は、皮目を強火で炙ることで香ばしさが増し、皮と身の間にある旨味を引き出すことができます。ポン酢や醤油だけでなく、塩とレモンでシンプルにいただく「塩たたき」も、初鰹の繊細な味を楽しむのにおすすめです。
山菜の苦味で春のデトックスを取り入れる
八十八夜の頃は、わらび、ぜんまい、ふき、タラノメといった山菜も美味しい季節です。これらの山菜に共通する独特の「苦味」には、冬の間に体内に溜め込んだ老廃物を排出する働きがあると言われています。

「春の皿には苦味を盛れ」という言葉がある通り、昔の人は山菜を食べて体を目覚めさせていたんですね。
山菜の天ぷらやおひたしを献立の一品に加えるだけで、季節感がぐっと増します。アク抜きが面倒だと感じる場合は、水煮などの加工品を活用しても良いでしょう。自然の生命力をいただくことで、夏に向けた体作りをサポートしてくれます。
家族で楽しむ八十八夜の行事食アイデア

八十八夜はゴールデンウィーク期間中と重なることが多いため、家族や友人と集まる機会もあるでしょう。そんな時は、これまでに紹介した食材を組み合わせた「八十八夜特別メニュー」でおもてなしをするのも素敵です。
例えば、以下のような献立はいかがでしょうか。
- 主食:たけのこご飯 または 新茶の茶飯
- 主菜:初鰹のたたき 〜新玉ねぎ添え〜
- 副菜:山菜の天ぷら(タラノメ、こごみなど)
- 汁物:若竹汁(たけのことわかめのお吸い物)
- デザート:新茶と草餅、または抹茶スイーツ
このように、旬の食材をふんだんに使うことで、彩りも栄養バランスも良い食卓になります。「今日は八十八夜だから、これを食べると縁起が良いんだよ」といった会話を楽しみながら、日本の伝統的な食文化を次の世代に伝えていく良い機会にもなるはずです。
八十八夜の食べ物に関するまとめ
さいごに、記事の内容をまとめます。
- 八十八夜は立春から88日目である。
- 季節の変わり目であり、農業の節目として重要な意味を持つ。
- 代表的な食べ物は「新茶」で、無病息災や長寿のご利益があるとされる。
- 新茶にはテアニンやビタミンCなどの栄養素が豊富に含まれている。
- 「八十八」が「米」という字になるため、お米を食べる風習もある。
- たけのこご飯や茶飯など、旬の食材と合わせたご飯料理が人気。
- よもぎを使った草餅には、邪気を払い健やかな農作業を願う意味がある。
- お茶以外では、縁起が良いとされる「初鰹」が旬を迎える。
- 成長が早いたけのこは、子供の成長や立身出世の象徴とされる。
- 新茶の茶殻は捨てずに、天ぷらや佃煮にして食べると栄養を摂取できる。
- 山菜の苦味は、冬の間に溜まったものをデトックスする効果が期待できる。
- 一部地域では、藤の花に見立てたお菓子などを食べることもある。
- ゴールデンウィーク中は、これらの旬の食材を使った行事食がおすすめ。
- 旬のものを美味しく食べることで、心身ともに健康に夏を迎えられる。











